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サッカーのルールはFIFAだけでは変えられない|8票中6票の壁とIFAB

更新:2026年7月15日 / ワールドカップ編集部 / 約8分で読めます
ルールを決めているのはFIFAではない。IFABという別組織で、投票は8票中6票が必要。FIFAは4票しか持たず、単独では何も変えられない。ワールドカップに「イギリス」が出ない理由も同じだ。

この記事の要点

  • 決めるのはFIFAではなくIFAB
  • 8票のうち6票がないと変えられない
  • FIFAは4票。単独では何も通せない
  • 英国4協会のうち最低2つの賛成が要る

初心者メモ

Q. IFABとは?

サッカーの競技規則を決めている組織です。FIFAと英国4協会(イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランド)で構成され、FIFAが4票、英国側が各1票で合わせて8票を持ちます。

この記事の数字:ルール変更に必要なのは8票中6票。FIFAは4票しか持っていない。

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結論——ルールを決めるのはFIFAではない

IFAB(国際サッカー評議会)の投票権
FIFA:4票
イングランド/スコットランド/ウェールズ/北アイルランド:各1票
合計8票のうち、改正には6票が必要

日本サッカー協会の説明によれば、IFABはイギリス4協会から各1名、FIFAから4名の計8名で構成され、出席者の4分の3(8票中6票以上)の賛成があった場合に競技規則の改正が決まる。

図:IFABの8票

FIFAは4票。改正に必要な6票には、単独では2票足りない

FIFA(211協会の頂点)4票イギリス4協会(各1票)4票改正に必要な票数6票

図は編集部が作図(画像の転載ではない)。イギリス4協会(イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランド)が各1票を持つ。1958年からこの配分。

この数字が意味することは、はっきりしている。

誰が持ち票単独で改正できるか
FIFA(加盟211協会の頂点)4票できない(2票足りない)
イギリス4協会4票できない(2票足りない)

FIFAがどれだけ望んでも、イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドのうち最低2つを説得しなければ、ルールは変わらない。人口約540万人のスコットランドと、約310万人のウェールズが、世界のサッカーのルールに拒否権に近いものを持っている。

決まる時期と場所

会議時期できること
年次事務会議(ABM)11月試行の承認。ルール改正はできない
年次総会(AGM)翌年2月か3月ルール改正

AGMは原則としてイギリス本土4協会のいずれかで輪番開催される。ただしW杯開催年はFIFAが決めた地(通常はスイスのチューリッヒ)で行われる。改正が決まると1か月以内にFIFAから各国協会へ通達され、7月1日から全世界で施行される。

ルール改正の提案は、FIFA加盟協会や各大陸連盟が、総会前年の11月1日までに書面でIFAB事務局長に提出する。提出先は年次総会の主催協会、つまりイギリス4協会のいずれかだ。ちなみに一般のファンも、IFABのメールアドレスに意見や質問を送ることができる。

なぜこうなったのか——年表で見る

出来事
1863年10月26日イングランドサッカー協会(FA)とロンドンの12クラブが会議。12月8日までに6回のミーティングで統一ルールを作成。近代サッカーの誕生
1882年イギリス4協会が英国選手権を開催しようと話し合ったところ、互いのルールが微妙に違うことが判明。調整機関としてIFAB発足を決定
1886年6月2日第1回IFAB総会、ロンドンで開催
1904年フランス・オランダを中心とした欧州大陸諸国がFIFAを設立。IFAB設立の18年後、近代サッカー誕生から41年後
1906年イギリス4協会がFIFAに加盟。ただしルールはIFABの決定にFIFAが従う
1913年FIFAがIFABメンバーに加入。イギリス4協会とFIFAが各2票(計10票)、改正には8票必要。イギリス4協会がそろえばFIFAが反対しても改正できた
1958年イギリス4協会が各1票、FIFAが4票に。改正には8票中6票。ここで初めて、どちらか一方だけでは決められなくなった

すべてを決めた順番

いちばん大事なのは、この順番だ。

誕生の順番
近代サッカー(1863年)
↓ 19年後
IFAB発足の決定(1882年)/第1回総会(1886年)
↓ 18年後
FIFA設立(1904年)

サッカーのルールを決める機関は、FIFAより18年早く存在していた。FIFAは後発として、すでに動いていたルール体系に「従う」形で始まった。1913年にようやくIFABの席を得て、1958年に4票まで増やした。それでも6票の壁は越えられない。

THE ANSWERの連載で、長年サッカー取材を続けてきた荻島弘一氏は「サッカーのルールはどこが決めるの?」という問いにこう答えている。「主導しているのはイギリス」——と。

だから、W杯に「イギリス」は出てこない

ここまで読めば、素朴な疑問の答えも見えてくる。なぜW杯にイギリス代表がなく、イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドがバラバラに出るのか。

答えは「先にあったから」だ。イギリス4協会はFIFAが生まれる前から、それぞれ独立した協会として存在し、互いに国際試合を戦っていた。1882年に英国選手権を開催しようとしたときには、すでに4協会が別々のルールを持っていたほどだ。

FIFAは1904年に、その既存の枠組みの上に建てられた組織である。後からできた組織が、先にあった4協会を1つにまとめる理由も権限もなかった。4協会はIFABに常任の席を持ち、それは今も変わっていない。

だから、W杯に出るのは「イギリス」ではなくイングランドであり、スコットランドであり、ウェールズなのだ。国連加盟国は1つなのに、サッカーの代表は4つある。スポーツの単位と国家の単位は、必ずしも一致しない。

2026年の新ルールも、決めたのはIFAB

これは歴史の話で終わらない。今大会から導入された新ルールも、すべてIFABの決定だ。

  • 8秒ルール——GKがボールを保持できる時間の制限
  • VARの適用範囲拡大
  • ハイドレーションブレイク

過去の大きな決定も同じだ。2012年7月5日、チューリッヒのFIFA本部で開かれたIFAB特別会議で、ホークアイとゴールレフの両方のゴールライン・テクノロジーが満場一致で採用された。史上初めて、サッカーのルールに機械判定が正式に入った瞬間である。2018年3月3日のAGMでは、VARが正式にルールへ導入された。

2026年大会でオフサイドディレイによってヤマルのゴールが取り消されたのも、元をたどればこの8票の会議室にたどり着く。

ここからは編集部の見方

この構造は、しばしば「時代錯誤」と批判される。FIFA加盟は211協会。そのうち4つが、人口でも競技人口でも上位ではないのに、常任の議席と各1票を持ち続けている。アジアの47協会にもアフリカの54協会にも、IFABの議席は1つもない。

だが、擁護する見方も成り立つ。もしFIFAが単独でルールを変えられたら、どうなるか。FIFAは大会を主催し、放送権を売り、興行として成立させる立場にある。試合を面白くしたい、時間を短くしたい、広告を入れたいという圧力は常にある。そこにブレーキをかける存在が制度として組み込まれている——という読み方もできる。

実際、今大会でFIFAは上位4カ国が準決勝まで当たらないようドローを設計し、2030年の64カ国拡大も議論しようとしている。これらはIFABの管轄外、つまりFIFAが単独で決められる領域の話だ。大会の形はFIFAが変えられるが、競技そのもののルールは変えられない。この線引きが、意図されたものかどうかは分からない。だが結果として、そういう構造になっている。

レポートで使うときの要点

この話は、いくつかの学問領域の入口になる。

テーマ問い
国民国家論「国」の単位は誰が決めるのか。なぜサッカーだけ英国は4つなのか
国際機関のガバナンス211協会の頂点が、4協会の同意なしに動けない構造は妥当か
制度の経路依存1863年・1882年・1904年という順番が、140年後の投票権をなぜ規定しているのか
スポーツと帝国ルールを作った国が、ルールを決める権利を持ち続けることの意味

数字はどれも一次資料で確認できる。8票、6票、1863年、1886年、1904年、1958年。覚えやすく、引用しやすく、そして議論の余地がある。記事末尾の出典から、日本サッカー協会やIFABの公式ページに直接たどれるようにしてある。

まとめ

サッカーのルールはFIFAが決めていない。IFABという8票の会議が決めていて、FIFAはそのうち4票しか持たない。改正には6票が要る。だからFIFAは、イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドのうち最低2つを味方につけなければ、ルールを1文字も変えられない。

理由は単純で、サッカーが英国で生まれ、ルールを決める機関がFIFAより18年早くできていたからだ。W杯にイギリス代表がいないのも、同じ理由から説明できる。

7月16日、そのイングランドはアルゼンチンと準決勝を戦い、1-2で敗れたルールを作った国の、60年ぶりの決勝進出はならなかった。だが7月20日の決勝も、その先のすべての試合も、あの8票の会議室が決めたルールの上で行われている。

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参考資料・出典

本記事の作成にあたり、以下の情報源で事実を確認しました。データは2026年7月15日時点のものです。

  • 日本サッカー協会(JFA)ドキュメント|JFA|日本サッカー協会確認した内容:サッカーの競技規則の改正や制定などが国際サッカー評議会(IFAB)で決められている点、IFABが1886年にイングランドサッカー協会(The FA)・スコットランドサッカー協会・ウェールズサッカー協会・アイルランドサッカー協会のイギリス4協会によって組織された点、現在はイギリス4協会から各1名・FIFAから4名の計8名の代表者で構成される点、出席者の3/4(8票中6票以上)の賛成があった場合に競技規則の改正が決まる点、本部がFIFAと同じスイスのチューリヒに置かれている点
  • Wikipedia(国際サッカー評議会)国際サッカー評議会確認した内容:1863年10月26日にイングランドサッカー協会とロンドンの12クラブが会議を開き12月8日までに6回のミーティングで統一ルールを作成し近代サッカーが誕生した点、1882年に英4協会が英国選手権開催のため話し合った際に互いのルールが微妙に違うことが判明しIFAB発足を決定した点、第1回IFAB総会が1886年6月2日にロンドンで開催された点、FIFAが1904年にフランスやオランダを中心とした欧州大陸諸国によって設立されIFAB設立の18年後・近代サッカー誕生から41年後だった点、英4協会が1906年にFIFAに加盟したがルールはIFABの決定にFIFAが従うことになった点、1913年にFIFAがIFABメンバーに加わり英4協会とFIFAが各2票・改正には10票中8票が必要で英4協会がそろえばFIFAが反対しても改正できた点、1958年に英4協会を各1票・FIFAを4票とし改正には8票中6票が必要となりどちらか一方だけでは決められなくなった点、年次事務会議(ABM)が11月に開かれルール改正はできない点、年次総会(AGM)が2月か3月に英本土4協会で輪番開催されW杯開催年はFIFAが決定した地(通常チューリッヒ)で行われる点、ルール改正提案を前年11月1日までに書面でIFAB事務局長に提出する点、一般のファンもIFABに意見や質問を送れる点、2012年7月5日のIFAB特別会議でホークアイとゴールレフのゴールライン・テクノロジーが満場一致で採用された点
  • Wikipedia(サッカー競技規則)サッカー競技規則確認した内容:IFAB年次総会でFIFAの4票とイギリス本土4協会(イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランド)各1票の計8票のうち6票以上の賛成でルールが改正される点、改正後1か月以内にFIFAから各国協会に通達され7月1日から全世界で施行される点、2018年3月3日にチューリヒのIFAB年次総会でVARが正式導入された点
  • THE ANSWER(荻島弘一氏)W杯でも新規則、サッカーのルールはどこが決める? 強い「英国」の力 FIFAだけで改正は不可能確認した内容:「サッカーのルールはどこが決めるの?」という問いへの答えが「主導しているのはイギリス」である点、ルールを決めているのがFIFAではなくIFABという別組織である点、IFABが1882年にイギリス4協会によって設立されFIFA誕生の1904年より20年以上前である点、FIFAがイギリス4協会の決めたルールをそのまま採用していた点、1913年にFIFAがIFABに加わった際の議決権が4協会各2票に対しFIFAも2票で8割以上の賛成が必要だったため英4協会がまとまればFIFAが反対しても関係なかった点
  • 日本サッカー協会(競技規則)競技規則|日本サッカー協会確認した内容:サッカーの競技規則がIFABによって制定されJFAが毎年改正部分を含めて日本語に翻訳している点、FIFAならびに加盟する各大陸連盟および加盟協会下で行われるサッカー競技がすべてこの規則に基づきプレーされている点、2026年5月19日付回状第33号で競技規則第12条・第3条・第7条の追加および改正が通達された点
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