この記事の要点
- イングランドが6-4で60年ぶりの3位
- 合計10点は3位決定戦の史上最多得点
- サカがハットトリック、エムバペは2点
- 平均3.8点で決勝の2.7点より多い
初心者メモ
Q. なぜ3位決定戦をやるの?
準決勝で敗れた2チームが、3位と4位を決めるための試合です。優勝が懸かっていないぶん守りが緩みやすく、ワールドカップ全体では1試合平均3.8点と、決勝の2.7点より多く入っています。
この記事の数字:3位決定戦は1試合平均3.8点。決勝の2.7点より多く入っている。
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| 日時 | 2026年7月19日 6:00(日本時間)/終了 |
|---|---|
| 会場 | ハードロック・スタジアム(マイアミ) |
| 対戦 | 🏴 イングランド 6-4 フランス 🇫🇷 |
| 決勝 | 7月20日 4:00・ニューヨーク/ニュージャージー(メットライフ・スタジアム) |
フランスは7月14日の準決勝でスペインに0-2で敗れ、3大会連続の決勝進出を逃した。対戦相手は準決勝でアルゼンチンに1-2で敗れたイングランドに決まった。FIFAランキング3位と4位による3位決定戦である。そしてこの試合には、もうひとつの意味がある。ディディエ・デシャン監督にとって、14年間のフランス代表監督生活の最後の試合になる。2025年1月に「2026年大会限りでの退任」を自ら発表しており、この3位決定戦がデシャンにとって14年間の指揮の最後の試合となった。
「無意味な試合」という批判
3位決定戦への風当たりは強い。最も有名な発言は、2014年ブラジル大会でオランダを率いたルイス・ファン・ハール監督のものだ。3位決定戦の前日、彼はこの試合を不公平であり、存在すべきではないと語った。
批判の中身はいつも同じだ。キャリアで最悪の夜から中2〜3日で、誰も子どもの頃から憧れたことのないメダルのために、全力でプレーしろと言うのか——という主張である。準決勝で敗れた直後のチームに、モチベーションを見出せというほうが酷だという理屈だ。
そして、この批判はすでに一度勝っている。欧州選手権(EURO)は、1980年大会を最後に3位決定戦を廃止した。決め手になったのは、その1980年のイタリア対チェコスロバキアだった。1-1のままPK戦にもつれ、9人目までかかってようやく決着。しかも観客はスタディオ・サン・パオロに2万4千人あまりしか集まらず、開催国の他の試合の半分以下に落ち込んでいた。1976年大会の3位決定戦に至っては、観客7千人未満だったという。
ところが、データは逆を言っている
ここからが本題だ。3位決定戦は1934年、1938年、そして1954年から2022年まで毎大会実施され、これまでに20試合が行われてきた(1930年と1950年は大会方式の都合で実施なし)。この20試合で生まれたゴールは76点。そして——
図:1試合平均得点(1986年以降の10大会)
3位決定戦は決勝より1試合あたり1.1点多い——「消化試合」の逆だ
図は編集部が作図(画像の転載ではない)。20試合の3位決定戦で0-0に終わった試合はゼロ。2026年は6-4で合計10点、史上最多になった。
3位決定戦:1試合平均 3.8点
決勝:1試合平均 2.7点
3位決定戦10試合で38得点、同じ期間の決勝10試合で27得点。「消化試合」のほうが、1試合あたり1.1点多く入っている。
さらに驚く数字がある。
0-0に終わった試合:ゼロ
1934年から2022年まで、一度もスコアレスドローがない。決勝では2010年(スペイン1-0オランダ・延長)や2022年(アルゼンチン3-3フランス・PK戦)のように、90分で動かない試合が珍しくない。3位決定戦では、それが一度も起きていない。
ここからは編集部の見方
理由は単純だと考えている。失うものがないからだ。決勝は勝てば英雄、負ければ4年間言われ続ける。だから守る。リスクを取らない。ミスを恐れる。3位決定戦にその重圧はない。負けても4位、勝てば3位。その差は、決勝の1位と2位の差に比べればはるかに小さい。
結果として、両チームとも前に出る。守備は緩む。点が入る。「モチベーションがないから凡戦になる」という予想は、実際の記録とは逆になっている。緊張から解放された試合のほうが、サッカーとしては面白くなる——3位決定戦が20回にわたって証明してきたのは、たぶんそういうことだ。
3位決定戦が生んだ記録
1958年 フランス 6-3 西ドイツ——今も破られない大会記録
フランスにとって、3位決定戦は縁の深い試合だ。1958年スウェーデン大会、フランスは西ドイツを6-3で下した。この試合でジュスト・フォンテーヌが4得点。大会通算13得点となり、この記録は68年経った現在も破られていないW杯単一大会の最多得点記録である。
今大会のエムバペとメッシが8得点で並んでいることを考えると、13という数字がどれだけ異常か分かる。そしてその記録は、3位決定戦で完成した。
2002年 トルコ 3-2 韓国——W杯史上最速ゴール
日韓大会の3位決定戦は、キックオフ直後に動いた。トルコのハカン・シュキュルが開始1分たたずにゴール。これがW杯史上最速ゴールとして記録されている。その後イルハン・マンスズが2点を追加し、韓国も李乙容(イ・ウリョン)と後半アディショナルタイムに宋鍾国(ソン・ジョングク)が返して3-2。最後まで分からない試合になった。
1986年 フランス 4-2 ベルギー——延長戦にもつれた3位決定戦
メキシコ大会でも、フランスは3位決定戦に回っている。ベルギーと2-2のまま延長へ進み、104分にジャン=ピエール・パパン、111分にマニュエル・アモロスが決めて4-2。「消化試合」が延長戦になった。
ちなみにフランスは3位決定戦を2度戦い、2度とも勝ち、その2試合で計10得点している。7月19日は3度目の3位決定戦になる。
1994年 スウェーデン 4-0 ブルガリア
アメリカ大会。ブロリン、ミルド、ヘンリク・ラーション、ケネット・アンデションが決めて4-0。前半40分までに4点が入る一方的な展開だった。
FIFAが3位決定戦をやめない理由
批判があってもFIFAが続けるのには、実務的な理由がある。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 賞金 | 3位と4位で受け取る額が変わる |
| FIFAランキング | 公式戦なのでポイントが加算される。W杯は重要度係数が最も高い大会のため、変動が大きい |
| 興行 | ノックアウトの試合がもう1つ増え、スタジアムがもう1回埋まる |
| 放送 | 決勝の前日に、放送枠をもう1つ作れる |
そして個人タイトルへの影響も見逃せない。得点王争いが接戦の場合、3位決定戦に出る選手には90分の上乗せチャンスがあり、決勝進出組はその日休んでいる。1958年のフォンテーヌはまさにこれで記録を伸ばした。
今大会も他人事ではない。エムバペは8得点でメッシと並び、アシスト数で上回ってアディダス・ゴールデンブーツ争いの首位に立っている。そのエムバペが、決勝の前日に90分を戦う。メッシが準決勝2でどうなるかにもよるが、3位決定戦が得点王を決める可能性は十分にある。
10得点の乱打戦が示したこと
「どうせ消化試合でしょ」と切り捨てるのは、たぶんもったいない。今回の10得点はその極端な例だ。20試合で0-0がゼロ、1986年以降は平均3.8点。データが言っているのは、この試合は高確率で点が入るということだ。
そのうえで今回は、デシャンの14年が終わった。選手として1998年に主将としてトロフィーを掲げ、監督として2018年に優勝し、2022年に準優勝。選手と監督の両方でW杯を制した史上3人目の男の、最後の90分だった。そしてこの試合でエムバペが2得点し、10得点で得点王が決まった。フランスにとっては3度目の3位決定戦で、過去2回はどちらも勝っていたが、今回は4-6で敗れた。
見る理由は、意外と揃っている。
なお翌日の決勝はスペインが1-0(延長)でアルゼンチンを下した。このカードは2026年3月15日にUEFAが中止を発表した「幻のフィナリッシマ」(欧州王者 対 南米王者)と同じ顔合わせだった。編集部の検証では、「前回W杯王者かつ南米王者」対「現欧州王者」の決勝はW杯史上初となる。