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W杯の歴史

フィナリッシマの知られざる秘密|41年で3回しか開かれていない

更新:2026年7月24日 / ワールドカップ編集部 / 約8分で読めます
欧州王者と南米王者が戦うフィナリッシマ。この名前が付いたのは2022年で、それ以前は別の名前だった。41年で3回しか開かれていない理由を追う。

この記事の要点

  • 名はイタリア語で「最終戦」の意味
  • 大会名は事故死した会長にちなむ
  • 29年の空白はコンフェデ杯が原因
  • 2026年はUEFAの代替案をAFAが拒否

初心者メモ

Q. コパ・アメリカって何?

南米版のEURO(欧州選手権)です。南米サッカー連盟(CONMEBOL)が主催する大陸選手権で、その優勝国が南米王者になります。フィナリッシマは、この優勝国とEUROの優勝国が1試合だけ戦う大会です。

この記事の数字:41年で開催は3回、中止は2回。開かれない年のほうが多い。

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結論——開かれない方が多い大会

フィナリッシマは、EURO(欧州選手権)の優勝国とコパ・アメリカ(南米選手権)の優勝国が1試合だけ戦う大会である。大陸をまたいだ「王者対王者」という、シンプルで強い企画だ。

ところが、この一戦は1985年の創設から41年で3回しか開かれていない。そして2回は、試合が組まれながら開催前に消えている。

41年の内訳
開催:1985年・1993年・2022年の3回
中止:1989年・2026年の2回
そもそも組まれなかった期間:1993年〜2022年の29年

2026年の中止は、この大会にとって初めての出来事ではなかった。37年前にも、ほとんど同じ理由で消えている。

図解——41年の年表

歴代の全5大会は次のとおり。

大会名対戦結果
1985アルテミオ・フランキ杯フランス(EURO1984) vs ウルグアイ(コパ・アメリカ1983)フランス 2-0
1989オランダ(EURO1988) vs ウルグアイ(コパ・アメリカ1987)中止
1993アルテミオ・フランキ杯アルゼンチン(コパ・アメリカ1991) vs デンマーク(EURO1992)アルゼンチン(PK戦)
2022フィナリッシマアルゼンチン(コパ・アメリカ2021) vs イタリア(EURO2020)アルゼンチン 3-0
2026フィナリッシマスペイン(EURO2024) vs アルゼンチン(コパ・アメリカ2024)中止

図:欧州王者 対 南米王者の41年

フィナリッシマの知られざる秘密|41年で3回しか開かれていない | ワールドカップ 欧州王者 対 南米王者(フィナリッシマ)の41年 金の枠=開催された3回 / 点線の枠=開催されずに消えた2回 4年4年29年4年 1985第1回フランス2-0 ウルグアイ1989中止日程で合意できず1993第2回アルゼンチンPK戦でデンマーク2022第3回アルゼンチン3-0 イタリア2026中止開催地で合意できず 1993年から2022年までの29年間、この一戦は一度も行われなかった。 ※ 1985年・1993年の大会名はアルテミオ・フランキ杯。現在の正式名称は CONMEBOL-UEFA カップ・オブ・チャンピオンズ。

開催3回・中止2回・空白29年。1985年と1993年の大会名はアルテミオ・フランキ杯で、現在の正式名称は CONMEBOL-UEFA カップ・オブ・チャンピオンズ。「フィナリッシマ」は2022年から使われている通称。

秘密①「フィナリッシマ」は2022年に付いた名前

名前から見ていく。「フィナリッシマ」はイタリア語で「最終戦」「グランドファイナル」を意味する。「ファイナル(final)」の最上級にあたる形で、日本語にすれば「決勝の中の決勝」といったところだ。

意外なのは、この名前が使われ始めたのが2022年だということである。UEFAが大会のブランドを発表したのは2022年3月22日。それまで、この一戦に「フィナリッシマ」という名前は存在しなかった。

同じ日に、トロフィーの正式名称も「CONMEBOL-UEFA カップ・オブ・チャンピオンズ」と発表されている。つまり現在、公式の大会名と通称は別物だ。

ロゴにも意味がある。モチーフは月桂冠で、優秀さと勝利の象徴とされる。そこにイタリアのトリコローレとアルゼンチンのアルビセレステのリボンが巻き付き、さらにプラチナと金のリボンが加えられた。UEFAはこのリボンを「CONMEBOLとUEFAの強い結びつきの象徴」と説明している。

秘密②大会名は、事故死した会長の名前

1985年と1993年、この一戦はアルテミオ・フランキ杯という名前で行われていた。

アルテミオ・フランキは、イタリアサッカー連盟会長、UEFA会長、FIFA副会長を歴任した人物である。1983年に交通事故で亡くなり、その翌々年に彼を記念して創設されたのがこの大会だった。

もう一つの旧称は「欧州・南米ネイションズカップ」。位置づけは明快で、当時クラブ世界一を決めていたインターコンチネンタルカップの代表チーム版である。クラブでやっていることを代表でもやろう、という発想から生まれた。

秘密③29年の空白を生んだ、居場所の喪失

1993年を最後に、この大会は29年間まったく開かれなかった。忘れられたわけでも、人気がなかったわけでもない。別の大会に役割を取られたのである。

1992年、サウジアラビアでキング・ファハド・カップという大会が始まった。各大陸の王者が一堂に会して戦う大会で、1997年の第3回からFIFAの管轄となり、名前をFIFAコンフェデレーションズカップに変えた。

ここで考えてみてほしい。大陸王者が全員集まる大会があるのに、欧州王者と南米王者だけを1試合戦わせる意味はどこにあるのか。

答えは「ほとんどない」だった。アルテミオ・フランキ杯は、コンフェデ杯に居場所を奪われて消えた。1993年の第2回が、そのまま最後の大会になった。

図解——29年も開かれなかった理由

図:この大会と、コンフェデ杯の関係

フィナリッシマの知られざる秘密|41年で3回しか開かれていない | ワールドカップ なぜ29年も開かれなかったのか 金=この大会の出来事 / 青=外部で起きた出来事(コンフェデ杯) 〜〜 24年省略 1985第1回を開催1992キング・ファハド杯創設=のちのコンフェデ杯1993第2回。これが最後に2017コンフェデ杯最終大会2019-20コンフェデ杯の廃止決定→ 両連盟が協力覚書202229年ぶりに復活2026中止 ※ 年表の中央は表示の都合で省略しています。コンフェデ杯の第1回は1992年サウジアラビア開催の「キング・ファハド・カップ」。

金がこの大会自身の出来事、青が外部(コンフェデ杯)の出来事。1993年と2017年のあいだは表示の都合で省略している。

秘密④復活のきっかけは、奪った側の消滅

そして話は反転する。今度はコンフェデ杯のほうが消えたのだ。

2017年ロシア大会を最後に、FIFAはコンフェデレーションズカップの廃止を決めた。インファンティーノ会長が各大陸連盟に送った書簡で明らかになったもので、理由はファンやスポンサーの支持が得られなかったこととされている。代替として、クラブワールドカップを4年に一度の大会へ作り替える方針が示された。

大陸王者が集まる場が消えた。すると、欧州王者と南米王者を戦わせる一戦に、また意味が戻ってくる。

  • 2020年2月12日 UEFAとCONMEBOLが協力覚書に署名。男女・各年代の大陸間対決を検討する共同委員会を設置
  • 2021年9月28日 両連盟が、EURO王者とコパ・アメリカ王者の対戦を正式に確認(当初は2022年からの3大会が対象)
  • 2021年12月15日 2028年までの覚書を再締結。ロンドンに共同事務所を置く条項を含む
  • 2022年3月22日 UEFAがブランドを発表。「フィナリッシマ」の名とトロフィー名が決まる
  • 2022年6月1日 ウェンブリーで29年ぶりの開催。アルゼンチンが3-0で勝ち、メッシが2アシスト

この復活は単発では終わらなかった。翌6月2日にはフットサル版が、2023年4月には女子の第1回大会が同じウェンブリーで開かれ、イングランドがブラジルをPK戦で下している。

コンフェデ杯に殺され、コンフェデ杯の死で生き返った。これがこの大会のいちばん奇妙な履歴である。

秘密⑤2026年、消えた本当の理由

2026年3月27日、カタールのルサイル・スタジアム。スペイン対アルゼンチンという、この大会史上もっとも豪華なカードが組まれていた。

ところが中東情勢の緊迫化でカタール開催が難しくなり、UEFAは代替案を探すことになる。ここからが、単なる「情勢の問題」では終わらなかった。

  • UEFAがサンティアゴ・ベルナベウ(マドリード)での開催を提案 → アルゼンチンサッカー協会(AFA)が拒否
  • UEFAがベルナベウとブエノスアイレスの2試合制を提案 → AFAが拒否
  • UEFAが欧州の中立地を提案 → AFAが拒否
  • AFAがW杯終了後の開催を提案 → スペイン側が日程を理由に拒否

3月15日、UEFAは中止を発表した。声明は「実現可能な代替案を検討したが、いずれも最終的にアルゼンチンサッカー協会にとって受け入れられないものとなった」と述べている。

後味も悪かった。CONMEBOLのアレハンドロ・ドミンゲス会長は、アルゼンチンが優勝国だと主張した。スペイン側は反発し、スペインサッカー連盟のラファエル・ロウザン会長が反論している。試合が行われていない大会の優勝国をめぐって、両連盟が対立するという事態になった。

秘密⑥1989年と2026年に共通する消え方

ここからは編集部の見方

ここで年表に戻りたい。1989年に予定されていたオランダ対ウルグアイも、開催されずに消えている。理由は両者が試合日程で合意できなかったからだった。

2026年の中止理由は、表向きは中東情勢である。だが実際に決め手になったのは、代替案について両協会が合意できなかったことだ。

37年をはさんで、この大会は同じ理由で2度消えている。戦争でも大会運営の破綻でもなく、「日程と場所で折り合えなかった」という、きわめて事務的な理由である。

なぜそうなるのか。編集部の見方はこうだ。この大会には、開催を強制する仕組みが無い。W杯やEUROには予選があり、日程がFIFAのカレンダーで固定され、放映権契約が動いている。だがフィナリッシマは4年に一度、2つの連盟と2つの協会が「その都度」合意して初めて成立する単発の試合だ。

4者のうち1者でも降りれば消える。29年の空白も、2度の中止も、その構造から出てきた同じ現象だと考えられる。

そして4か月後のW杯決勝

中止から4か月後の2026年7月19日。W杯決勝のカードは、スペイン対アルゼンチンだった。

中止になった一戦とまったく同じ顔合わせが、より大きな舞台で実現したことになる。結果はスペインが延長の末に1-0で勝ち、16年ぶり2度目の優勝を果たした。

ただしこれは「フィナリッシマが実現した」わけではない。W杯決勝はW杯決勝であって、この大会の記録には残らない。3月に中止された第4回は、いまも開催されないままである。

皮肉なのは、優勝国をめぐって両連盟が争っていた問題に、4か月後のピッチが答えを出してしまったことだ。もちろん公式には無関係の2試合である。

まとめ

フィナリッシマは、企画としては誰もが見たい一戦だ。だが41年で3回しか開かれていない。強制力のある枠組みを持たない単発の試合は、関係者が増えるほど消えやすい。

次にこのカードが組まれるとすれば、EURO2028とコパ・アメリカ2028の優勝国が決まったあとになる。4回目が本当に開かれるかどうかは、まだ誰にも分からない。

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参考資料・出典

本記事の作成にあたり、以下の情報源で事実を確認しました。データは2026年7月24日時点のものです。「1989年と2026年で消え方が同じ」という指摘は編集部による整理であり、両連盟が公式にそう説明しているわけではありません。

  • 日本経済新聞(共同通信)サッカー・フィナリッシマは中止 中東情勢の悪化で確認した内容:UEFAが2026年3月15日に中止を発表した点、3月27日にドーハ近郊のルサイルでアルゼンチン対スペインが予定されていた点、中東情勢の悪化が理由とされた点
  • Goal.com欧州王者スペインvs南米王者アルゼンチンの“フィナリッシマ”開催中止が決定確認した内容:2022年に29年ぶりに復活した大会である点、2026年がEURO2024王者スペインとコパ・アメリカ2024王者アルゼンチンの対戦だった点、UEFA声明が「実現可能な代替案を検討したが、いずれも最終的にアルゼンチンサッカー協会にとって受け入れられないものとなった」と述べている点
  • サッカーキングスペインとアルゼンチンによるフィナリッシマ、中東情勢悪化により中止 代替案はいずれも合意に至らず確認した内容:UEFAがサンティアゴ・ベルナベウでの開催、ベルナベウとブエノスアイレスの2試合制、欧州の中立地をそれぞれ提案しAFAが拒否した点、AFAがW杯終了後の開催を提案しスペイン側が日程を理由に拒否した点
  • Goal.comフィナリッシマ中止で南米サッカー連盟会長「アルゼンチンの勝利。スペインは出場しなかった」確認した内容:CONMEBOLのアレハンドロ・ドミンゲス会長がアルゼンチンを優勝国だと主張した点、スペインサッカー連盟のラファエル・ロウザン会長が反論した点
  • Soccerway(大会アーカイブ)フィナリッシマ/アルテミオ・フランキ・カップ 歴代優勝確認した内容:1985年アルテミオ・フランキ杯の優勝がフランス、1993年がアルゼンチン、2022年フィナリッシマがアルゼンチンである点
  • Weblio辞書(大会解説)フィナリッシマとは確認した内容:1985年と1993年の大会名がアルテミオ・フランキ杯で、名称が元UEFA会長アルテミオ・フランキに由来する点、インターコンチネンタルカップの代表チーム版にあたりFIFAコンフェデレーションズカップの前身とされる点、2022年の第3回がウェンブリーで行われメッシの2アシストでアルゼンチンが勝った点
  • 百度百科(大会項目)Finalissima確認した内容:1985年にフランスがウルグアイを2-0で下した点、1989年大会が出場予定のオランダとウルグアイの日程が合わず中止になった点、1993年にアルゼンチンがPK戦でデンマークを下した点、2023年4月に第1回女子大会が行われイングランドがブラジルをPK戦で下した点
  • 当サイトスペインが2026年W杯優勝|延長トーレス弾、20本対0本確認した内容:2026年7月19日(日本時間20日)のW杯決勝がスペイン対アルゼンチンで、スペインが延長の末に1-0で勝ち16年ぶり2度目の優勝を果たした点
  • UEFA公式Finalissima 2022, Italy vs Argentina: Brand identity revealed確認した内容:2022年3月22日にUEFAが大会のブランドを発表し、「フィナリッシマ」の名称とトロフィー名「CONMEBOL-UEFA カップ・オブ・チャンピオンズ」が決まった点、ロゴのモチーフが月桂冠で、両国の色とプラチナ・金のリボンを組み合わせている点
  • BritannicaWhat Is the Finalissima?確認した内容:EURO優勝国とコパ・アメリカ優勝国が戦う試合でUEFAとCONMEBOLの共催である点、初開催が1985年で旧称がアルテミオ・フランキ杯(元UEFA会長にちなむ)である点、1993年の第2回のあと、両連盟の協力協定を経て2022年に改称・復活した点、1985年がフランス対ウルグアイで、1993年と2022年はアルゼンチンが勝った点、2026年大会がUEFAにより中止された点
  • AFPBB NewsクラブW杯を4年ごとの開催に、コンフェデ杯廃止へ―FIFA方針確認した内容:FIFAのインファンティーノ会長が各大陸連盟に送った書簡でコンフェデレーションズカップの廃止が示された点、2017年ロシア大会が最後になる点、ファンやスポンサーの支持が得られていないという問題があった点、代替としてクラブW杯を4年に一度の大会にする方針である点
  • サッカーキングコンフェデ杯が中止に…クラブW杯も毎年開催から4年に1度へ変更確認した内容:コンフェデレーションズカップの第1回が1992年にサウジアラビアで開催された点、2017年ロシア大会が第10回で最後となった点
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